企画の世界では、「誰に買ってもらいたいか=ターゲット」「どういうときに使ってもらいたいか=利用シーン」を決めるのが基本です。(ターゲットは“み~んな”と言い切る企画もありますが、ここでは触れません)同時に、「こういう人には使って欲しくない」「こんな使い方はして欲しくない」を明確にするという切り口があります。それこそが企画である、と言う人もいます。ただ、商品はそうやってターゲットを絞って作っても、実際には想定しないお客さんが購入、使用することは必ずあります。中には想定外の人にたくさん売れてしまって予想外の大ヒットになることもありますよね。もちろん、売る客を選ぶような商売もあることはありますが、それのほうがレアケースでして、通常は買ってくれるのなら、ターゲットでなくたって売ります。
さて、プロ用の機材を初心者が購入して、この記号がわかりにくい!と文句を言っても、プロの世界では当たり前の記号なんですよ、と言われれば文句は言えないし、大抵は納得します。商品に文句を言うより、そういうものを分不相応に選んでしまったな、ちょっと背伸びしすぎたなぁ、と悔やんだりするものです。でも、こういう明確なケースよりも、もっとあいまいなケースの方がはるかに多いです。だから、いろいろなトラブルやクレームが起きるのです。
だからといって、クレームを恐れて、あらゆるユーザー層を想定してしまうと、わけのわからないものになってしまいます。作り手としては、どこまでユーザー層の広がりを想定しておくか?がポイントになります。でも、最近はクレームを恐れて、安全にという方向に向かっています。
でも、初心者に合わせてわかりやすい表示をすることで、本当に買って欲しいユーザー層にそっぽを向かれてしまうこともあります。テレビのリモコンに、大きく漢字で「電源」って印刷されていたら、ちょっと自分向きの商品ではないのかな?って引いてしまう人もいるでしょう。逆に、わかりにくい言葉なんだけど、それを知っていることで、なんだかその世界の仲間入りしたようなうれしさを感じさせてしまうこともあります。業界用語や符牒を使いたがるアマチュアの心理に通じるものです。スターバックスではコーヒーのサイズをグランデとかベンティとか表示していますが、日本人にはわかりにくいことは彼らも十分承知しています。でも、決してLとかLLにはしないですね。スターバックスというテーマパークに入場してくれたら、どっぷりその雰囲気に浸かってくつろいで欲しい、だから言葉もスターバックスの言葉で通します、ということです。
操作性(=I/F)だけをとっても、
・誰でも初めてでも感覚的にわかるI/F
・とっかかりは悪いけど、慣れるにしたがってもう手放せなくなるI/F
・ 難解で文句を言いながらもそれを使いこなすやりとりを楽しめるI/F
などがあります。それを、取説を見なくても初心者が一通り使えるか?で、操作性の良し悪しを判断しようとする勘違いが結構あるのです。外部に評価を依頼したりするケースでもよく見かけるので、要注意です。
結局、商品やサービスを提供する側は、顧客のインテリジェンスをどこまで尊重できるか?というのがポイントになると思います。インテリジェンスって、単に読解力とかの知識ということだけではなく、知的好奇心とか創造性も含めてのものです。バカヨケ=fool proofという言葉がありますが、なんでも分かりやすくすればいい、ということではないということですね。
今の世の中、簡単ではないのも事実ですので、強い信念も持たないとなかなか徹底できないのですけどね。
しかし、上記のようなことをわかった上でも、身の回りの商品を見回してみると、あまりに分かりにくくて不親切で、本当に腹が立つことって、まだまだ多いですよね。単にユーザーの立場に立たないで、作り手の思い込みや都合でわかりにくくしてしまっていることを、上記のようなロジックにすり替えてしまうことをしてはいけません。それでは、単に作り手の傲慢になってしまいますからね。
基本がちゃんと出来た上で、初めてこのようなことが言えるので、そこを勘違いしないようにしてください。
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